「2011年新聞・テレビ消滅」佐々木俊尚著より

2009年上半期にイギリスのインターネット広告費がテレビを抜いて、取扱高上は第1位のメディアとなっている。一方、2008年度日本の広告費は、テレビが前年比98.7%(1兆9,092億円)、新聞前年比87.5%(8,276億円)と減少しているのに対し、インターネットのみが116.3%(6,983億円)と増加している。この現象は不況による一時的なものではなく、社会のパラダイムシフト、とされている。

近年のインターネットなどのコミュニケーション手段による変動は、2年から3年遅れで日本で起こっている。では今アメリカではどう変化が起き、それが日本でどのような形で現れるのか、ということをこの本は分析している。

今の日本の変化を予測する要素として、著者は下記を挙げている。

・消費者の変化(「マス」の時代の消滅)
・技術・環境の変化(プラットフォーム化)
・構造変化(「コンテンツ」「コンテナ」「コンベイヤ」の役割の変化)
・広告のテクノロジー

今までマスメディアは、コンテンツ(番組・記事)/コンテナ(テレビ受像機・紙面)/コンベイヤ(電波・販売店)を全て抑えて来たが、これからはコンベイヤ(場合によってはコンテナも)をインターネットに奪われるため、マスメディアの地位が低下するために広告費は減少していくのである。

一方、アメリカではヤフーですらその力は弱まりつつあり、変動著しい。グラムメディアクレイグスリストESPNのような新しい形のメディアが伸張している。これらはネットの特徴を生かして、よりユーザーにあったサービスを、より低コストに提供している。

本著にはないが、アメリカ最大手の検索連動広告の運用業者であるEfficient Frontier社では、自社のブログで広告に科学的手法を用いたパイオニア、クロード・C.・ホプキンス(Claude C. Hopkins)を例に取り、不況下でも科学的手法とテクノロジーをもとにした運用をもとにした広告運用は勝つ、と勝利宣言をしている(参照:Search Advertising in a Recession - Part 2)。広告接触から購入までデータを計測でき、高度な統計分析に絶対的な自信を持っているのである。

果たしてこれら海千山千のネット事業者に、新聞・テレビはどう対抗していくのか、興味深いところである。